減額交渉の防止と対策reduction-request

減額請求・交渉をされないために(防止策)

借り手(テナント)の立場からすれば、家賃・地代が安いことにこしたことはありませんので、いつの時代でもオーナー様が借り手(テナント)から減額請求・交渉を受ける可能性はあるはずですが、昭和の頃は、現実に減額交渉を受ける事例は皆無といってよいほどありませんでした。

しかし、昨今は、オーナー様が減額交渉を受ける事例を頻繁に目にします。これは、減額交渉を請け負う会社(コンサルタント会社)が多数設立されたこともありますが、より根本的には、バブル崩壊から「失われた20年」といわれる長期間に亘る不況、デフレの進行により、テナント企業の売上・収入の減少が原因です。
つまり、減額請求の増加は借り手(テナント)側の事情によりますから、オーナー様側として確実に減額請求・交渉を防止する手段があるわけではありません。

ただ、借り手(テナント)も人間です。借り手(テナント)との間に心理的に減額の話を持ち出しにくい関係を作っておけば、5件のうち1件程度は減額交渉を受ける割合を減らすことは可能です。また、こうした関係を作っておけば、いざ減額請求を受けた場合でもオーナー様側有利に解決する可能性が高まります。いずれにしても、オーナー様が有利になります。

こうした人間関係を作る方法ですが、日常オーナー様あるいは管理会社様が、物件をしっかり管理する姿を借り手(テナント)に見せることが一見遅いようで一番の早道になります。
その中で、当事務所の経験上、とりわけ、「掃除」と「修繕対応」の効果が高いです。
たとえば、オーナー様が定期的に、たとえば毎日掃除をして、その姿を借り手(テナント)が見ていれば、借り手(テナント)はなかなか減額を持ち出せないものです。物件がきれいだと借り手(テナント)としても気持ちが良いですし、オーナーの熱意・誠意が借り手に知らず知らずに伝わるものです。修繕対応も同様です。この他、定期的に借り手(テナント)にアンケートを取るなどして借り手(テナント)に不満をためないようにすることも有効です。

こうしたことは費用もかかりませんので、是非お勧めします。ただ、確実な方法ではありませんから、どうしても減額請求・交渉を受けてしまうことは避けられません。

減額請求・交渉をされてしまったら(対策)

借り手(テナント)あるいは減額交渉の請負会社(コンサルタント会社)から家賃・地代の減額交渉を受けた場合、まずは冷静に相手の話(言い分)を正確に聞くこと、最近は、交渉は文書で来ることも多いですからその場合は文書を正確に理解することが大切です。

こうした話を受けるとあわててしまい冷静な対応をとることができないものですが、相手の話を誤解しては的確な対応をとることはできませんし、そもそも減額を断ることは何時でもできるのですから、まずは冷静に相手の話を正確に理解することが大切です。

こうして相手の話を正確に理解したら、次に、相手の減額請求の内容、つまり減額希望額が現在の相場からみて妥当な数字かどうかを検討することが必要になります。

もちろん、賃貸借は一定期間続く契約で、しかも更新により更に長期間に亘り継続する契約ですから、現行の家賃・地代と相場賃料を比較し、相場賃料の方が安いからといって、ただちに相場賃料までの減額が認められるわけではあえりません(借り手が裁判所に減額を求めて提訴しても、単に相場が安いからだけの理由では、相場までの減額は認められません)。

ただ、昨今は昭和の頃と違い、空き室リスクにも十分注意を払わなければなりません。人気の高い、テナント訴求力の強い物件であれば、借り手(テナント)の減額交渉を拒否しこのため万一借り手が退去しても、すぐに新規テナントが入居するので損害は生じませんが、テナント訴求力が強くない物件では、新規テナントが長期間見つからずその間の賃料を失ってしまうことになります。

そこで、同時に、物件のテナント訴求力、更には市況、市場動向などについても正確な情報を入手する必要があります。こうして、同種物件の相場、物件のテナント訴求力、市況、市場動向などについて正確な情報を踏まえ、借り手(テナント)に対し最もオーナー様側有利な解決内容を求めて交渉することとなります。

この交渉の際ですが、以前より出ていってほしいと思っていた借り手(テナント)に対しては、減額を拒否すれば足ります。むしろ、この機会に退去を求めてもよいでしょう。物件のテナント訴求力が強い場合にも、基本的には強気に拒否すればよいのですが、現行家賃が相場より相当に高額である場合には、ある程度の減額に応じてもよい可能性はあります。ただ、オーナー様の資金繰りが苦しい状況であれば、拒否で良いと思います。

テナント訴求力が必ずしも強くない場合は、ケースバイケース判断になります。空き室リスク、現行地代と相場との差額、市況などを総合的に判断することになりますが、なかなか難しい判断になります。

以上の検討で、一定の減額に応じることが合理的だと判断される場合であっても、直ちに減額に応じることは得策ではありません。減額、つまり減収はオーナー様の金融機関の借入の返済に影響しますし、他の借り手の賃料にも影響(他の借り手の賃料も減額しなければならなくなる)する可能性があるからです。減額に応じることは最後の手段とすべきです。

つまり、減額に応じることが合理的であっても、減額以外に借り手(テナント)を満足させる方法がないか検討すべきです。例えば、当事務所が取り扱った事例では、物件のテナント訴求力や相場、市況などから借り手の減額請求に正当な理由があったケースで、インターネット料金を全てオーナー負担とすることを条件に減額をしないで解決した事例があります。

オーナーがマンション一棟についてインターネット契約をしてインターネット料金を負担するのですが、賃料を何万円も減額することと比べれば非常に安く済ませることができました。こうしてたとえ借り手の減額請求に理由があっても、オーナー様側で新たな付加価値を提供することにより、賃料の減額に応じることはできるだけ避けることをお勧めします。

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